ファッション情報バックナンバー

◆コットン・ファッション情報◆

2016/17 秋冬コットン素材傾向
PREMIÈRE VISION PLURIEL 及び MILANO UNICA より

 パリ:ニコル・トットローより
 
<カラー>

FOGGY
FANCY
ROCKY




パリ:ニコル・トットローより
<ファブリック>
  ROCK & FOLK


 NORTH WIND


EXTREME ADVENTURE


PERFECT FIT 


 GLAMPING

 2016/17年秋冬向けテキスタイルを発表する見本市、プルミエールヴィジョン(PV)パリとミラノ・ウニカ(MU)が、この9月初旬から中旬、相次いで開催された。
 PVパリは、「PVファブリック」、「PVヤーン」、「PVアクセサリー」、「PVレザー」、「PVデザイン」、「PVマニュファクチュアリング」が完全に統合され、PVのブランド戦略がパワーアップ。より利便性の高い見本市となった。出展社数はこれら6つの見本市全体で、1,924社。日本は48社で第7番目に多い国となった。主軸のPVファブリックには34か国770社、内日本からは37社が出展した。来場者数は昨年同期比微減の61,664 名。その74%はフランス以外の国々からの来場で、このパーセンテージは過去の会期を上回り、より国際色豊かになった。日本や韓国も増加し、中国は17%増とさらに大きく上昇している。
 一方MUは、出展社数404社、その内訳はイタリア企業が333社、外国企業が71社で前年同期並み。とくに日本の出展が増え、今回で第3回目を迎える「ジャパン・オブザーバトリー」に47社が参加。これは初回と比べ62%増。これに初登場の「コリア・オブザーバトリー」10社が加わった。来場者数は6,322社。人数ではなく、企業数での発表だった。この数字を見ると、ポテンシャルが下がったように思われるが、決してそうではないという。7月に初のプリマMU、次いでやはり初めてのMUニューヨークを開き、10月の上海におけるMU中国へ続くからだ。また来期はMU会長が国際派といわれるエルコレ・ポット・ポアーラ氏に引き継がれる。新会長の下、さらなる国際化が推進されるだろう。
 総じて市場活性化に向けた新しい動きが目立つシーズンだった。



<全 般 傾 向>

“美”を創造するシーズン
 ファッションは調和のとれた大人感覚が主調となり、シルエットも程よいシンプルな構築性へシフトしている。クチュールやアーティストが生み出すクリエーションに多くの関心が集まる中、注目されるのがテキスタイルの存在感。「デザインは素材から始まる」といっても過言ではないように、テキスタイルでファッションの“美”を創造するシーズンが来ている。
 とはいえその方向はもう過去への郷愁ではなく、遠過ぎる未来を夢想するのでもない。追求されるのは、あくまでも地に足のついたリアルな“美”。
 PVは、「現実は不十分。もっと美しさを、メイク・イット・ビューティフル!」と呼びかける。創造力を漲らせて、様々な文化やジャンルとの出会いを推進し、美のセンスを積極的に発信するときであるという。PVトレンド委員長のパスカリーヌ・ヴィルヘルム氏も、「エンベリッシュする―美しく飾る―シーズン。ボディも素材も、新しい機能にも美的情緒が求められる」と語っている。
 ヴィジュアルにアクションペインティングのような絵の具のブラッシュ・タッチが採り入れられていたのも、今季の特徴。ジャクソン・ポロックなど、遊び心のあるモダンアートからの影響を強く感じさせる。
 MUも、新トレンドディレクター、ステファノ・ファッダ氏が、“アート”を切り口に「トレンドエリアをモダンアート展でも見るような雰囲気」に仕上げていた。
 2016/17年秋冬は、テキスタイルの持つ表現力をアート感覚豊かに発揮させるシーズンになりそうだ。

“自然”X“テクノロジー”X“光”
 今季のテキスタイルは、春夏にも増してナチュラル志向が強い。秋冬という季節柄、ウールが主役だが、コットンも毛足のある温かいウインターコットンが浮上し、前年以上の勢いを見せている。自然界を思わせるモチーフやフォークロアも引き続く。合繊も自然を意識させる方向へ動いている。とはいえそれだけにとどまらないのが今シーズンである。
 キーワードは“自然”、“テクノロジー”、“光”。このトリオを駆使して、洗練された“美”のハーモニーを奏でることが重要だ。パフォーマンス性をアップする異素材ミックスや、アーティスティックなコラージュ、アッセンブラージュ、構築的レイヤード、ボンディングなど、様々な技術や加工とともに、何らかの光の要素、艶出しやラミネートなども採り入れてモダンに仕上げる。その程よいバランスのとれた組み合わせもキーポイントだ。自然感覚を残しつつ、人工的な光沢や質感を醸し出す、静かな素材感にスポットが当てられる。
 コットンも100%ものであっても、その良さはそのままに、テクニカルなタッチを潜ませたもの、あるいは上記の高度な加工を施したものが多くなっている。

スマート・クリエーション 
 今回PVパリで、社会の大潮流を語るシンポジウムが開催された。それが「スマート・クリエーション」。これは「社会的責任のある創造」という意味で、これからのテキスタイル開発は、エコロジー/サステイナビリティの視点や、エシカルな取り組み、利潤追求だけでないソーシャルビジネスの考え方・やり方が求められるというもの。PVパリのCEO、フィリップ・パスケ氏は、「PVがスタートして42年が経過し、繊維・ファッションの生産と販売へのアプローチは劇的に変化した。そこで今、PVは“スマート・クリエーション・プログラム”を用意し、長期戦略でこれに取り組んでいく。これはその第一歩」と挨拶した。
 あるデニムメーカーでは今シーズン、リサイクルデニムを打ち出したところ、意外なほど多くの引き合いが入ったという。ヨーロッパは日本以上に環境意識が強い市場だ。日本企業も情報の透明化やトレーサビリティ(追跡可能性)の重要性を認識し、「スマート」を訴求していく必要がある。
「スマートでいこう!」は今後の合言葉になりそうである。



<コットン素材のポイント>

ストレッチ・シック
 PVファブリックの初日ベストによると、メンズ向けファブリックで一番人気は、コットン100%。次いで伸縮性のあるコットン/ウールが来る。しなやかで着心地良く、しかもシックでエレガント、上品な雰囲気のものが受けている。ストレッチはレディスよりもメンズ向けの方が伸びているというメーカーもある。またニットなのに布帛のようにコンパクトなものも多く、その逆もあり、織り・編みの判別しにくいものが増えている。 

洗練されたラスティック
 マスキュリン/フェミニンなスーツ地に、洗練された粗野感、ラスティックを演出したものが多くなっている。ブークレ、スラブネップなどファンシーヤーン使いによる変化のあるテクスチャーで、ツイーディなタッチに仕上げた構築的な組織が中心。見た目よりも軽量感のあるものが多く、ドネガルツイード風やヘリンボン、ストライプ、小柄組織のものが目に付く。

ソフト・コク―ニング  
 コクーン(繭)のようにやわらかく体を包む、ふんわりと温かくて軽い風合いが見直されている。エコファーからムートン調、ヘアリーなパイル、シャギー、毛足の長い甘めの織りやレース、ループ、モール糸使い、またフリンジを出したものも目立つ。さらに裏毛や裏パイル、フリース、段ボールニットが引き続きブーム。象皮などアニマルスキン加工のものも見られる。  

立毛・微起毛の温もり 
 温もりのある立毛のコーデュロイやベルベット、ベロアが久々に復活。とくにシャツ向け極細コールのプリントが人気。オパール加工のベルベットなど装飾的なものへの関心も見られる。またエメリー起毛など微起毛のコットンが広がっている。ピーチスキン、スエードやヌバック調など。さらに特筆すべきはフロック加工の拡大。PVアワードでグランプリを受賞したのも、フロッキーメッシュだった。

抑えた3Dボリューム
  立体的な3D効果は、ボリュームを抑えたものが目新しい。ネオプレンやフォームラバーの使用も前シーズンに比べると少なくなった。その中心となっているのは、レリーフ調のジャカードや、糸の収縮率の差による凹凸、太糸使いによるテクスチャー、シワやプリーツなど、後加工によるふくれの表現。キルティングもパターンキルトなど、装飾性を増して見られる。

滑らかな光沢
 シーズンごとに「光りものはもう終わり」と言われながらも、新しいイメージでカムバックしてくる光沢感。今季は滑らかな美しい光沢のある素材が増えている。上品なサテン、シルケット加工、またラミネート加工やラッカー、ワックス加工、ニスのようなコーティング、さらにラメやメタリック箔使いのキラキラした煌めき。とくに玉虫のような金属光沢への関心が高まっている。

ファンシーなダブルフェイス 
  コートなどアウターの差別化追求に、ダブルフェイスが活躍している。とくに表側はクラシックな定番で、裏側はファンシーな色柄ものなど、表裏ががらりと異なる素材が多くなっている。マットに光沢のファンタジーを重ねたり、マルチなアッセンブラージュであったり。二重織や風通織、ジャカード、またボンディングやサンドイッチなどの多層構造、ニードルパンチのクラフト技巧も注目される。

ニュー・トラディション
 慣れ親しんだ伝統にデジタル感覚や現代的グラフィックを融合させ、新境地を切り開く傾向が強まっている。とくに英国調をモダンに展開したものが多い。タータンチェックやアーガイル、ウインドーペインから千鳥格子、グレンチェック、ガンクラブなど、他のモチーフを組み合わせたり、シャドーをつけたり、グラデーションさせたり。またカラーブロックの表現も目立つ。

ウィンターインディゴ
 インディゴブルーは、シーズンレスでジェンダーレス。今シーズンも引き続き旋風を巻き起こしている。デニム専業ではないメーカーも、インディゴ染めのクオリティは、コンスタントに売れているという。デニムは、ストレッチやニット風デニム、セルヴィッチが好評で、新しいものとして70年代風ワッシャー加工のジャカードデニムやレザー加工。ダブルフェイスも焦点。ダウン用の超軽量コンパクトなものも見られる。

パターンはジオメトリック/グラフィック
 プリントやジャカードの柄で圧倒的多数は、ジオメトリック/グラフィック。中でも白/黒のアーキテクチュラルなパターンが広がりを見せている。オプティカルなコラージュ感覚のものも多い。エスニック調も幾何学柄が顕著で、イカットやタペストリー風のものなど。フラワーモチーフは概して後退。その一方、大胆な大柄化も見られ、モダンアート感覚や幻想的なグラデーションの表現も目立つ。またネクタイ風などメンズ向けプリントの拡がりも新しい動き。花柄を含むフェミニンテイストの色柄がメンズシャツ向けに浸透し始めている。
さらにプリント下生地として、ジャカードなど不規則な表面変化のあるリッチな素材が多くなっていることにも注目したい。

カラーの主調はダーク
 全般に微妙なニュアンスをともなう色調で、主調はダーク。ビビッドが減り、黒味がかった色が増えている。暗色といっても侘しい感じではない、濃いリッチな色で、赤系のプルーンや赤ナス、赤味のピンク、それにカーキやモスグリーンのグリーン系が新しく映る。さらにブルーはインディゴやネイビーなど、いたるところに見受けられる。黒や白、生成り、グレーといったニュートラルカラーは、光る効果と組み合わせて用いられことが多い。